映像制作において、編集は欠かせない作業のひとつです。編集には、昔から使われている「リニア編集」と、近年主流となっている「ノンリニア編集」の2つの方法があります。
リニア編集とは?
リニア編集とは、映像や音声を編集する際に、素材を再生機器から1つずつ取り出し、順番に繋げて編集する方法です。リニア編集では、再生機器の出力を信号に変換して、その信号を磁気テープに記録するため、一度記録したものを編集することはできません。このため、編集の際には素材を順番につなげる必要があり、一度作成したシーンを変更する場合は、再度最初からやり直す必要がありました。また、編集時の手順が複雑で、作業に多くの時間と手間がかかります。
リニア編集は映像編集の基本的な方法であり、デジタル技術が普及する以前には広く用いられていました!
リニア編集の手順
リニア編集では、編集する映像を順番に録画したテープを、別のテープに順番通りにコピーする方法が一般的です。具体的な手順は以下の通りです。
- 編集する映像を1本ずつ録画する
- 録画したテープを再生し、必要なシーンを別のテープにコピーする
- コピーしたテープを編集テーブル上に順番通りに置いて、完成作品を作り上げる
この方法は、編集の途中でミスをした場合や、一度編集した箇所を修正する場合には、全てのテープを再度編集する必要があるというデメリットがあります。
リニア編集のメリットとデメリット
メリット
- 編集が直感的:編集がビデオテープなどの物理メディアを使って行われるため、編集する映像が時間軸上に順番に並んでおり、直感的に編集ができるという特徴があります。また、編集中に映像を確認しながら編集作業ができるため、編集結果をすぐに確認できます。
- 精度が高い:一度編集した部分を再度編集する場合にも、元の映像素材を使用するため、編集精度が高いというメリットがあります。
- テープ交換不要:編集するために複数の映像素材を切り貼りする必要がある場合、リニア編集はビデオテープなどの物理メディアを使用しているため、素材の入れ替えなどが容易にできます。
デメリット
- 編集作業に時間がかかる:素材をビデオテープなどの物理メディアに録画し、素材の切り出しや貼り付けを行うため、編集作業に時間がかかるというデメリットがあります。
- 編集過程で品質劣化が起こる:ビデオテープの繰り返し使用により、素材の品質が劣化する可能性があります。また、素材の切り出しや貼り付けによっても、品質劣化が生じることがあります。
- ストレージスペースが必要:リニア編集では、ビデオテープなどの物理メディアを使用するため、多くのストレージスペースが必要になります。また、素材を保存する場合には、保管に特別な注意が必要となります。
リニア編集には、直感的で編集精度が高いというメリットがありますが、編集作業に時間がかかったり、品質劣化が起こる可能性があるというデメリットもあります!
リニア編集に使用される代表的な機材
ビデオデッキ(VTR)
映像の記録再生に使用される装置で、リニア編集においては不可欠な機材です。
オーディオデッキ
音声の記録再生に使用される装置で、リニア編集においては重要な機材の一つです。
エディターコントローラー
編集時にビデオデッキやオーディオデッキを操作するための機材で、カットの精度を高めることができます。
モニター
映像や音声の確認に使用される機器で、リニア編集においては必要不可欠な機材です。
編集機
映像や音声を編集するための機器で、リニア編集の代表的な編集機としては、CM編集などでよく使われる「CMX-6000」や、「SONY BVH-2000」があります。
編集コントローラー
編集機を操作するための機器で、映像や音声のカットの位置や長さを決める際に使用されます。
モーションコントローラー
映像の速度や方向、トリミングなどの操作を行うための機器で、リニア編集においては必須ではありませんが、編集の効率を上げることができます。
リニア編集でソフトウェアなども使用されていましたが、主にハードウェアによる編集が行われるため、ソフトウェアを使用することはあまり一般的ではありませんでした!
ノンリニア編集への移り変わり
リニア編集からノンリニア編集への移り変わりは、映像制作技術の進歩と共に起こりました。昔は、映画やテレビ番組の編集は、映像の撮影順に合わせて、フィルムを切り貼りしていくリニア編集が主流でした。しかし、1980年代にコンピュータ技術が急速に発展したことで、映像編集においてもノンリニア編集が可能になりました。ノンリニア編集は、リニア編集とは異なり、映像の編集をデジタルデータとして扱うことができる編集方法です。映像データをコンピュータ上に取り込み、必要な編集作業を行いながら、自由自在に編集することができます。また、編集作業の途中で、必要な場所に自由に挿入や追加を行うこともできます。
ノンリニア編集は、リニア編集に比べて編集作業のスピードや精度が向上し、より柔軟な編集が可能になりました。また、必要な編集作業を簡単に行えるため、映像制作のコスト削減にもつながりました。現在では、ノンリニア編集が主流となっており、映像制作においても大きな役割を担っています。ただし、リニア編集も映像制作の基礎技術として重要であり、リニア編集からノンリニア編集への移り変わりは、映像制作技術の進歩と共に不可欠なものとなっています。
まとめ
リニア編集は、映像制作の初期において主流だった編集方法であり、映像制作において基本的な技術となっています。しかし、現代においては、ノンリニア編集が主流になっています。リニア編集の欠点を解決するために、ノンリニア編集では素材の取り込み、編集、出力がデジタルで行われ、効率的に編集が可能となっています。
1992年生まれ。CM、テレビ番組の企画・演出・制作を経験し、撮影・編集も手がける映像作家・ビデオグラファー。モーショングラフィックスを中心に、ブランディングや、プロモーションをサポートいたします。