音声制作において、音量や音質のバランスは非常に重要です。特に、音声の聞こえやすさを判断する指標としてラウドネスという概念があります。
ラウドネスとは?
ラウドネスとは、音量や音圧といった概念とは異なり、人間が音を聴いたときに感じる「大きさ」のことを指します。具体的には、同じ音量であっても周波数成分や音響特性によって人間の感じる音の大きさが異なります。ラウドネスは、人間の聴覚特性に合わせて計算された単位で表されます。
ラウドネスは音量とは異なり、音の周波数特性や騒音レベルなど、様々な要因によって左右されます!
ラウドネスの単位
ラウドネスの単位は、デシベル(dB)を使用します。デシベルは、音の強度を表す単位で、1kHzの純音において、聴感レベル40フォンの音圧レベルを基準としています。一般的に、人間の聴覚において、ラウドネスが+10dB増加すると音が2倍の大きさに感じられます。ラウドネスを測定する際には、周波数特性による影響を排除するため、ラウドネス単位の前に周波数特性補正を行うことが一般的です。これを行った上で測定されたラウドネス値を「ラウドネス単位(LU)」または「ラウドネス単位全域(LUFS)」と呼びます。また、ラウドネス単位全域は、EBU R128という規格で定められた単位であり、ラウドネスの測定に広く使用されています。
ラウドネスの測定には、専用のラウドネスメーターが使用されます。ラウドネスメーターは、ラウドネスの測定に加えて、ピークレベルや真のピークレベルなど、音声の各種情報を測定することができます。近年では、デジタルオーディオワークステーション(DAW)やオーディオインターフェイスにもラウドネスメーターが搭載されることが一般的になってきています。
ラウドネスの重要性
ラウドネスが適切に設定されているかどうかによって、音声が聞きやすいかどうかや、聞き手に与える印象が大きく変わってくるからです。例えば、ラウドネスが十分に高く設定されていない場合、音声が聞き取りづらくなり、聞き手が集中力を維持するのが難しくなる可能性があります。また、ラウドネスが高すぎる場合は、聞き手に不快感やストレスを与えることがあります。
さらに、現代の音声メディアでは、ラウドネスが正確に測定され、調整されることが求められています。例えば、放送局は、ラウドネスを統一化することで、広告や番組間の音量差を解消し、視聴者に快適な視聴体験を提供することが求められます。また、映画や音楽の制作でも、ラウドネスは極めて重要な要素の1つであり、その調整には高度な技術が必要とされます。
ラウドネスは正確な測定と調整が求められています!
ラウドネスを測定する際には、ITU-R BS.1770という国際標準が使用されます。この規格は、音声信号のラウドネスを測定するためのアルゴリズムを定めています。ITU-R BS.1770では、ラウドネスの単位としてLKFS (Loudness, K-weighted, Full Scale)が用いられます。
LKFSは、ラウドネスのレベルを0dBFS(フルスケール)と比較した相対的な値を示します。例えば、-24 LKFSという値は、フルスケールから-24dBのレベルであることを意味します。このように、LKFSは音声のレベルを0dBFSからマイナスの値に変換して表現することで、さまざまな音源を比較しやすくしています。
ITU-R BS.1770に基づいたラウドネス測定には、さまざまなツールが存在します。例えば、Avid社のPro ToolsやAdobe Auditionなどの音声編集ソフトには、ITU-R BS.1770に基づくラウドネスメーターが搭載されています。また、ラウドネスメーター専用のプラグインも市販されています。
ラウドネスをコントロールする方法
ラウドネスの調整方法は、様々な方法がありますが、代表的なものをいくつか紹介します。
コンプレッション
コンプレッションとは、音声のダイナミックレンジを狭めることで、ラウドネスを均一化する方法です。コンプレッションをかけることで、音声のピークレベルを下げ、同時に音量を上げることができます。ただし、適切な設定が必要であり、不適切な設定をすると音声が歪んだり、音声品質が低下することがあります。
イコライズ
イコライズとは、周波数帯域ごとに音量を調整することで、ラウドネスを調整する方法です。具体的には、低音域や高音域を強調することで、よりラウドに聞こえるように調整することができます。ただし、イコライズの過剰な利用は、音声品質を損なうことがあります。
リミッティング
音量の最大値を制限するためのプロセッサーであり、コンプレッションよりも強力な制御を行うことができます。リミッターを使用することで、音声のクリッピングを防ぎ、ラウドネスをコントロールすることができます。
適切な調整方法を選択することで、より高品質な音声制作が可能となります!
まとめ
ラウドネスは、音声制作において重要な指標の1つであり、聴取者にとって快適な音量を確保するために必要な要素です。音声制作においては、適切なラウドネスの制御が求められます。また、ラウドネスを測定するためのさまざまな単位があり、それぞれの特性を理解することが必要です。ラウドネスの測定や制御については、専門的な知識や技術が必要ですが、これらの技術を理解することで、より高品質な音声制作が可能になります。
1992年生まれ。CM、テレビ番組の企画・演出・制作を経験し、撮影・編集も手がける映像作家・ビデオグラファー。モーショングラフィックスを中心に、ブランディングや、プロモーションをサポートいたします。