DXとは?IT、ICT、IoTの混同しやすい用語との違いや、自治体の活用方法を解説

最近よく聞く「DX」やそれに付随する用語の解説や、実際の定義、事例について解説します。漠然とした定義だけで、言葉だけが先行して広まってしまっている印象がありますが、しっかりと目的を定めることができれば、あとはその目的を達成するための手段や道筋を考え、実行すればよいのです。

DX

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最近ニュースやテレビ番組、雑誌などを賑わせる「DX」という単語。単語自体は聞いたことがあっても、実際何のために使うものなのか、どのようなものなのか、完全に理解している方は少ないかもしれません。

今回はこの「DX」という取り組みがどのようなものなのか、ITやICT、IoTといった他にもよく聞く単語との違いは何か、実際に自治体ではどのように導入され、取り組まれているのかの具体例や利用例などをご紹介します。

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DXとは?

DXとは?

そもそもDXとはなんのことなのか?といまいちピンとこない方も多いのではないでしょうか。
DXとはDigital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称であり、「進化したITを普及させることで、人々の生活をより良いものにしていく変革のこと」と定義されています。

この概念自体はここ数年で新しく定義されたものではなく、スウェーデンの大学教授であるエリック・ストルターマン氏が2004年に提唱したものとなります。

教授の提唱から早くも20年弱の月日が流れ、私たちの生活にはそれまでには考えられないくらいデジタル化され、便利になりました。2000年代と言えば3Gの携帯電話が普及し始め、カメラ付き携帯電話が主流になったのも束の間、iPhoneの登場により生活は激変します。

それだけではなく、手紙やFAXがメールになったり、フィルムカメラがデジタルカメラやスマートフォンに置き換わったり、音楽CDがダウンロードやストリーミングに置き換わるなんて、その時には予想できなかったものが、どんどんと身近になっていると思いませんか?

でも、これだけでは「DX化」とはいえません。
では、具体的にどのようなことを進めていくことが必要なのでしょうか。順番に見ていきましょう。

IT、ICT、IoTの違い

DXと同じように出てくる言葉として「IT」「ICT」「IoT」があります。
混同しやすい部分でもありますので、順に説明します。

IT(Information Technology)とは?

情報技術そのものの総称となります。情報技術を扱う仕事をしている人が職業を聞かれて「IT系だよ」などと良く使うのではないでしょうか。本来であればもう少し細分化できるものの、詳しく伝えても…という時にざっくりとまとめてしまうことはよくあります。

ICT(Information and Communication Technology)とは?

通信技術を使って人とインターネット、人と人が繋がる技術のことを指します。
具体的にはメールやチャット、SNS、通信販売、ネット検索など、普段利用するWebサービスや、Google検索や楽天市場なども、このICTに括られます。

IoT(Internet of Things)とは?

人を介さずモノが自動的にインターネットと繋がる技術のことを指します。自動運転やスマート家電などがこれにあたり、Amazon EchoやLINE Clovaなどのスマートスピーカーや、テスラのオートパイロット、日産のインテリジェントドライビングなど、自動車の自動運転などもどんどん進化している印象があります。

DXは、これらのテクノロジーとデータを組み合わせ、新しいビジネスモデルを作ること、とされています。

自治体でのDXへの取り組み

では、実際にこのDXという取り組みを全国の自治体ではどのように導入し、取り組んでいるのでしょうか。
印象として「DX」という概念を表す言葉だけが、なんら明確な定義をされないままで独り歩きしている、という印象もなきにしもあらず、といった状況に見えることも少なくありません。都道府県や自治体レベルでも、「DX推進計画」はあっても、「自治体のDX」についての定義は明確ではないのです。

そのため「じゃあ実際には何をしたらいいのか」という根底の疑問は、DX化を考える上でまず最初にぶち当たる壁になりえるのかと思います。これまで役所の窓口業務をLINEからできるようにするなどのICT化を推進してきたけれど、それだけではDX化されたとはいえないため、何が違うの?と躓いてしまいがちです。

今回、DXをより詳しく調べるにあたり、自治体DX白書というサイトにこのような定義がされていましたのでご紹介します。

DXを「自治体・住民等が、デジタル技術も活用して、住民本位の行政・地域・社会等を再デザインするプロセス」と定義します。

参照:DXの基本1〜自治体DXの定義

これだと、少しイメージがしやすくなったのではないでしょうか。自治体のみならず、住民等もデジタル技術を活用して「住民本位」の行政・地域・社会等をリデザインする、という部分で、「官民共創」を掲げる自治体が多いのもうなづけます。

この自治体DX白書では、各都道府県のDX推進の取り組みスローガンや、実際にどの程度まで計画が進んでいるのかがレーダーチャートでわかるようになっています。東京や大阪などの大都市と言われるまちだけではなく、それ以外の都道府県でもそれぞれの理念や目標を掲げ、それぞれの都道府県のスローガンに沿って計画を進めていることがわかります。

和歌山県での取組み

では、自治体の和歌山県としてのDX推進の取り組みはどうなっているのでしょうか。「オープンデータを活用したデジタル化で「デジタル和歌山」を実現」とあります。具体的にはどのような取り組みをしているのか、解説していきます。

和歌山県では、コロナ後の飛躍に繋げるために「県民の暮らしと経済を守り切る」と「新しい世界への対応と挑戦」を二つの政策の柱として据えて、あらゆる分野でのデジタル化=「デジタル和歌山」を進めるとしています。令和2年に策定された「和歌山県官民データ利活用推進計画」ではDXは意識されていないが、令和3年に策定された「和歌山県データ利活用推進プラン」ではDXにも触れ、和歌山に設置された総務省「統計データ利活用センター」も活用したデータ利活用が計画されました。オープンデータに関する取り組みは先進的であり、多くの自治体が参考に出来るモデルケースといえるでしょう。

近畿地方の2府5県の中でも比較的デジタル化やDX推進をうまく進めている県、という印象を受けました。

オープンデータとは?ビッグデータとの違いは?

和歌山県が活用を宣言している「オープンデータ」とは一体何のデータになるのでしょうか?
同じように語られることが増えた「ビッグデータ」との違いについても触れていきます。

「オープンデータ」は「ビッグデータ」のひとつとして定義されています。
そもそものデータとは、コンピュータが判別できる0か1かのデジタルデータを指し、このデータが大量に集まったものを「ビッグデータ」と呼びます。

身近なところで言えば、コンビニのPOSレジのデータ。購入者の性別や年代、購入した時間帯や何を購入したか、というデータを集め、在庫の最適化などを図ることにもう何年も前から活用されている事例です。また、インターネットの検索結果などもビッグデータとして扱われることが多く、SEO対策などに検索キーワードとして利用されていますよね。

ただ、この膨大なデータも、分析や解析をすることで有意に利用することができ、ただ蓄積しているだけではなにも役に立たない、という一面があります。

では「オープンデータ」は具体的にどのようなものなのでしょうか。
総務省が定義したビッグデータの種別に関する分類にて

  • 国や地方公共団体が提供する「オープンデータ」
  • 企業のノウハウをデジタル化・構造化したデータ
  • 企業のM2M(Machine to Machine)に関するストリーミングデータ
  • 個人情報である「パーソナルデータ」

と4種類に分類できると定義しています。ここでいう「オープンデータ」は、政府や地方公共団体などが保有する人口動態をはじめとする公共的な情報のことであり、ビッグデータとして最も先行していると言われている分野となります。官民データ活用推進基本法という法律に基づいて、デジタルデータとして公表するすることが強力に推進されています。

具体的には「人口統計」や「公共施設の場所」などをはじめとした様々な公共のデータを、ユーザ(市民、民間企業など)に有効活用して、社会経済全体の発展に寄与することを目的としているものとなります。

導入、利用例

実際にはどのような導入、利用例があるのでしょうか。
調べてみたところ、福岡県ではAEDの設置場所のマップ表示や、体調の急変などの緊急事態に陥った時に、近くにいる救命有資格者に助けを求めることができるシステムなどに利用されている事例がありました。

それを踏まえて考慮すると、このような事例も考えることができるかと思います。

  • 県内の都市でひとり暮らし世帯の高齢者を見守り、助け合うためのシステム構築(お買い物や状況確認等)
  • 自宅介護をしている世帯への支援や相談、協力を仰げるようなシステムの構築
  • 小さいお子さんがいる世帯への地域の安全情報の提供や、県や市で実施する子育て支援などの告知、周知

ただ、高齢者の場合はスマートフォンの操作が難しい、ICTにはなかなか馴染んでもらえない、などのデメリットも考えられることから、「住民本位」「住民目線」を持って、どのようにしたら誰もが幸せに暮らせるのか、という点を考慮していく必要があるように思います。

DX推進にあたり考えておきたいこと

これらの事例は、自治体に限った話ではなく、民間の企業にも今後当たり前に求められてくる流れになるのは間違いありません。では何をしたらいいのか?という点ですが、やはりここは「利用者本位」で「利用者目線」に立っての目的の策定が必要になってくるのではないかと考えます。

ただ新しい技術を使ってみただけ、ただ新しい言葉を言ってみただけ、では達成したとは言えません。
DXは「明確に定められた目的を達成してこそ意味のある」プロジェクトであると考えます。
明確な目的を策定し、それを実現するためにはどうしたら良いのか、どのようなデジタル技術が必要なのかをしっかりと検討していく必要があります。

まとめ

最近よく聞く「DX」やそれに付随する用語の解説や、実際の定義、事例について解説してきましたが、少しは明確になってきましたでしょうか。
漠然とした定義だけで、言葉だけが先行して広まってしまっている印象がありますが、しっかりと目的を定めることができれば、あとはその目的を達成するための手段や道筋を考え、実行すればよいのです。

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